日本では古くより、人が亡くなると来世への旅路の支度と故人の安らかな成仏を願い、近親者の手で故人の体を清める「湯灌」という儀式が行われてきました。近年は遺族の精神的負担が大きいことや、映画「おくりびと」のヒットの影響もあり、湯灌の儀式は葬儀社が行い、遺族の方には立ち合いをしていただくというスタイルに変化しています。
日本は諸外国と比較してみても、特に風呂を好む国民性であり、赤ちゃんが生まれると産湯につけ、仕事から帰ると毎日風呂に入って一日の疲れを癒し、明日からの活力にするというのは日本人なら誰しもが当たり前の事としてとらえています。
長い人生の終焉を迎えたとき、体を清めて故人の身支度を整え、汚れだけでなくこの世の穢れや悩みもすべて洗い流し、さっぱりとした形で故人を送り出してあげることは、遺族側の心の区切りつけることにも繋がります。故人への感謝と労いの気持ちを胸に、できるだけ湯灌の儀式には立ち合い、安らかな成仏を願って差し上げてください。
家族や親しい人が亡くなると、一定期間、生前と同様に食事などを用意する「殯(もがり)」という考え方が古来の葬送儀礼として日本にはありました。やがて、それが時代を経るごとに少しずつ変化していき、現在のお通夜になっていったと言われています。
ひと昔前は、通夜と言えば灯明と線香を絶やすことなく、家族で交代しながら夜通し故人を守ったものですが、近年では僧侶の読経及び参列者の焼香といったセレモニー(式典)に1時間弱、そのあと夕食も兼ねた会食を行い、開始から終了まで2~3時間程度で済ませるのが主流となっています。当社でも、閉式後は火の気を落とし、電気式のお灯明に変えて、遺族の方々には身体を休めていただくようおすすめしています。葬儀当日は時間厳守のスケジュールに追われ、納得のゆくまでゆっくり故人とお別れをするというのは、ままならない事もあります。通夜式が終わり、参列者がお帰りになられた後を大切な故人との最期のお別れの機会ととらえ、棺の小窓越しにお顔を見ながら、感謝の気持ちやお別れの言葉をしっかりと亡き人に伝えておきましょう。
通夜振舞い(通夜ふるまい)とは、通夜の後に行われる会食の場です。別室に用意されたお酒や食事を皆で囲みながら、故人を偲んで思い出を語り合います。遺族から参列者への感謝を表すとともに、お清めや故人の最後の食事といった意味も含まれる儀式です。お通夜は、予定の方が急に来れなくなったり、反対に思ってもみない方が参列に来られたりと、人数の把握がしづらいものです。予定人数に多少の増減があっても対応しやすい様、お通夜の席の食事は大皿(寿司桶やオードブルなど)で用意しておくのがおすすめです。参列者側としてはご遠慮もあり、なかなか席に付きにくいので葬祭スタッフだけでなく喪主や近親者が協力してお席へご案内すると良いでしょう。又、同じ種類のお料理で各席を揃えておくと参列者の方々も箸を進めやすいかもしれません。